【味方につけたい1冊】 no.1 細谷功『具体と抽象 世界が変わって見える知性のしくみ』

かわいい猫のイラスト付きの、ホンキとホンネをぶちかました1冊。

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図書館で心理学の棚に入っていた本書。
ビジネスパーソン向けの表紙だったので、「抽象」という概念をどうわかりやすく解説しているのか気になって開いてみたら、いやはや。
これ、ビジネスコンサルタントが本音を随所に込めて書いた、抽象思考の解説書だった。
まず、「はじめに」で実にいい気分にさせてくれる。

本書はある意味で、その「わかりやすさ」に逆行する本です。

かわいい猫のイラストと4コマ漫画がついてたら、わかりやすさをウリにした本なのだろうと思って当然だが、中身はそうじゃない。
世の中で崇め奉られる「わかりやすさ」と戦うための本なのだ。

なぜ、「具体と抽象」なのか?


本書の対象読者は明確に想定されている。

・発想力や理解力を上げたい人。

・周囲とのコミュニケーションギャップに悩んでいる人。

こうした読者へのレッスンとして書かれている。

ビジネスコンサルタントである著者は、個人レベルではなく、企業レベルでも、「わかりやすさ」とは逆の「抽象思考」が必要だときっぱり言い切っている。

わかりやすさが求められるのは、社会や企業が「成熟期」に入っているときだという。
この時期には、少しずつの変化は起こせても、革新的な変化は起こせない。
しかし「成熟期」にこそ、来るべき「衰退期」に備え、「世代交代」を考える必要がある。
そのときに必要なのが、大きな変化を起こす機能を持つ「抽象概念を扱う」という能力なのだ。

だからビジネス書としても使えるのだろうが、人文学的にアプローチで興味深いのは、著者の執筆戦略だ。

これは2行程度でしか触れられていないが、
「抽象」扱うためのわかりやすい解説を、「具体」レベルの言葉でわかりやすくしてしまうのではなく、「具体」が持つ性質との対比で解説しているのだ。
過度に「わかりやすく」して内容の高度さを落としてしまうのを避けるために、相違を何度も提示する、という戦略だ。
これは発見だった。

 

こんな内容を扱っている


なぜ、議論は平行線をたどるのか?
「パクリ」はいけないが、「アナロジー」は良いのはなぜか?
二項対立でしか考えられない人の頭の中はどうなっているのか?
たとえ話はどうすれば上手くなるのか?

身近によくあるトラブルや不満の正体を、抽象と具体という考え方から解明してゆく。

本書は全20章+終章で構成されているが、どの章から読んでも問題ない。
抽象性というものを考えられるようになると、どんなことができるのか。
抽象性には、どんな性質があるのか。
それが、角度を変えて、何度も語られる。

この本、特に面白いのは、随所に経営コンサルタントとしての本音が見え隠れしているところだ。
抽象性を気に入らない「実務家」タイプの上司が、「『グローバル化とは何か?』なんて理屈をこねくりまわしている間に海外に行って現地を見てこい!」と言って、派遣された部下たちがまったく方向性の違うことを持ち帰ってくる、というのは「よくあるはなし」なのだそうだ。

 

具体と抽象のレベルを自在に操ろう!


本書の要点は、実に明快だ。
具体性が高い世界=眼の前のこと以外考えられない世界にだけ生きている人は、バカなのだ。
抽象性を多少なりとも操れる人は、そんなバカに振り回されるに決まっている。

だから、抽象レベルの高い見方を身に着けながら、時と場合によって適切な具体レベルへと降りていき、そのパラメーターを自在に操作しながら行動してゆくこと。
それが、それこそが、知性なのだ。

ちなみに、管理人の経験上、人から好かれる高齢者は、なんらかの知的特徴があり、一人残らず高い抽象性を身に着けているから、若者言葉や最近の社会の動向を掴むのが早い。
また、今の社会の中で、自分はどんな存在なのか、説明する言葉を持っている人も多い。
自分が知る知識にしか価値を認めない頑固な者は、まあそれは年齢を問わず、社会の流れをつかめず、取り残され、助けてくれる仲間もできず、悲惨なことになる。

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