彗星読書倶楽部の文学講座、『文学の教室』。
2026年2月〜3月は萩原朔太郎「猫町」とそのほかの優れた短篇を読む講座を開催します。
彗星読書倶楽部の会員さまは無料でご受講いただけます。
受講をご希望の方は必ず本講座の申込フォームを送信してください。
講座シリーズ【文学の教室】
【文学の教室】は、彗星読書倶楽部が手掛ける文学講座です。
小説・詩といった文芸作品から、注目すべき文化現象、現代思想などを解説します。
今回の「猫町」講座では、全4回の各回前半30分、参加者おひとりずつが課題作品の感想を語る時間とし、後半30分、講師による解説を行います。
解説パートでは、現代の演奏家が楽器を弾きながらクラシック音楽を解説するように、小説家である講師が書き手の立場から、作品の背景にある文学の歴史や、本文から読み取れる著者の思惑を説明します。
講座概要
今回の講座は、詩人・萩原朔太郎の小説「猫町」と、そのほかのすぐれた散文詩・随筆・詩歌を参加者同士で語り合い、その上で講師が作品を解説するものです。
日本語の表現を大きく前進させた、近代日本の詩の歴史における最重要人物である萩原朔太郎(1886~1942)は、現在でも広く読まれている、近代日本文学の大スターです。
詩歌が注目されがちな萩原ですが、彼が発表した短い文章群には、感性や想像、文化や時代にまつわる鋭い思考が刻まれています。
彼が描いたものをゆっくりと見聞し、その価値を収穫していきましょう。
萩原朔太郎について全く知らない人でも問題ありません。
個々の作品を楽しみながら、講座全体で、彼の歴史的成果の概略がわかる内容になっています。
テキストには岩波文庫『猫町 他十七篇』を使用しますが、本を持っている必要はありません。
講義の課題作品は全てネット上で読むことができます。
各回の課題作品については、講義内容を必ずお読みください。
【開催日時・講義内容】
第1回:2月7日(土) 20:00~21:00
小説「猫町」を読みます。
語り手が山間部の見知らぬ町に迷い込んだ体験を綴った短篇小説「猫町」。
その文章には、人が世界をどのように見ているか/感じているか、そして他人に話したら疑われるかもしれない体験のなかで語り手は何を信じるのか、といった省察が含まれています。
作品の魅力や特徴を参加者全員で見つけてみましょう。
講師の解説パートでは、冒頭に掲げられた文章エピグラフの意味、作品の中にこっそりと含まれているフランス文学やアメリカ文学の影響といった、本文だけではわからない文化的背景や、幻想と現実の境界線の描き方、語り手の思考についてわかりやすく説明します。
猫町
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第2回:2月21日(土) 20:00~21:00
田舎の時計・墓・郵便局・海・自殺の恐ろしさ・群衆の中に居て・詩人の死ぬや悲し、計7作を読みます。
小説のような文章が続く詩”散文詩”や、エッセイと呼ぶべき文章を多数手がけた萩原。
彼はどのように土地や都会生活を捉えていたのでしょうか。
現代とは違う価値観なのか、それとも今も通じる考え方をしているのか?
そもそも本気で語っているのか、実は誇張を含ませているのか……?
講義パートでは、「田舎と都会」「群衆とフランス文学」「郷愁」をキーワードに、登場する人名も交えて解説します。
田舎の時計他十二篇
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第3回:3月7日(土) 20:00~21:00
虫・虚無の歌・貸家札・この手に限るよ・坂・大井町、計6作を読みます。
前回に比べ、こちらは詩人のイマジネーションを存分に発揮した散文と言えるでしょう。
時に幻想的風景が描かれ、時に抽象概念を引き合いに出す文章で、彼は何を語っていたのでしょうか。
講義パートでは、今日の思想や芸術論で頻出する「表象」という概念をキーワードに、萩原朔太郎の想像力・表現力の特徴を解説します。
田舎の時計他十二篇
https://www.aozora.gr.jp/cards/000067/files/395.html
第4回:3月21日(土) 20:00~21:00
秋と漫歩、老年と人生、そして代表的詩作品である「天景」「猫」「遺伝」「死なない蛸」、計6作品を読みます。
彼の感性と思索がわかりやすく語られているエッセイ2篇と、文学世界でよく話題にされる4つの詩を通して、詩人の考え方と表現能力の両方が理解できるはずです。
講義パートでは、今もなお右に並ぶ者のいない、彼独自の日本語表現を解説します。
秋と漫歩
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老年と人生
https://www.aozora.gr.jp/cards/000067/files/1773_58422.html
しづかにきしれ四輪馬車、
ほのかに海はあかるみて、
麦は遠きにながれたり、
しづかにきしれ四輪馬車。
光る魚鳥の天景を、
また窓青き建築を、
しづかにきしれ四輪馬車。
まつくろけの猫が二疋、
なやましいよるの家根のうへで、
ぴんとたてた尻尾のさきから、
糸のやうなみかづきがかすんでゐる。
『おわあ、こんばんは』
『おわあ、こんばんは』
『おぎやあ、おぎやあ、おぎやあ』
『おわああ、ここの家の主人は病気です』
人家は地面にへたばつて
おほきな蜘蛛のやうに眠つてゐる。
さびしいまつ暗な自然の中で
動物は恐れにふるへ
なにかの夢魔におびやかされ
かなしく青ざめて吠えてゐます。
のをあある とをあある やわあ
もろこしの葉は風に吹かれて
さわさわと闇に鳴つてる。
お聽き! しづかにして
道路の向うで吠えてゐる
あれは犬の遠吠だよ。
のをあある とをあある やわあ
「犬は病んでゐるの? お母あさん。」
「いいえ子供
犬は飢ゑてゐるのです。」
遠くの空の微光の方から
ふるへる物象のかげの方から
犬はかれらの敵を眺めた
遺傳の 本能の ふるいふるい記憶のはてに
あはれな先祖のすがたをかんじた。
犬のこころは恐れに青ざめ
夜陰の道路にながく吠える。
のをあある とをあある のをあある やわああ
「犬は病んでゐるの? お母あさん。」
「いいえ子供
犬は飢ゑてゐるのですよ。」
或る水族館の水槽で、ひさしい間、飢ゑた蛸が飼はれてゐた。地下の薄暗い岩の影で、青ざめた玻璃天井の光線が、いつも悲しげに漂つてゐた。
だれも人人は、その薄暗い水槽を忘れてゐた。もう久しい以前に、蛸は死んだと思はれてゐた。そして腐つた海水だけが、埃つぽい日ざしの中で、いつも硝子窓の槽にたまつてゐた。
けれども動物は死ななかつた。蛸は岩影にかくれて居たのだ。そして彼が目を覺した時、不幸な、忘れられた槽の中で、幾日も幾日も、おそろしい飢饑を忍ばねばならなかつた。どこにも餌食がなく、食物が全く盡きてしまつた時、彼は自分の足をもいで食つた。まづその一本を。それから次の一本を。それから、最後に、それがすつかりおしまひになつた時、今度は胴を裏がへして、内臟の一部を食ひはじめた。少しづつ他の一部から一部へと。順順に。
かくして蛸は、彼の身體全體を食ひつくしてしまつた。外皮から、腦髓から、胃袋から。どこもかしこも、すべて殘る隈なく。完全に。
或る朝、ふと番人がそこに來た時、水槽の中は空つぽになつてゐた。曇つた埃つぽい硝子の中で、藍色の透き通つた潮水(しほみづ)と、なよなよした海草とが動いてゐた。そしてどこの岩の隅隅にも、もはや生物の姿は見えなかつた。蛸は實際に、すつかり消滅してしまつたのである。
けれども蛸は死ななかつた。彼が消えてしまつた後ですらも、尚ほ且つ永遠にそこに[#「そこに」に傍点◎]生きてゐた。古ぼけた、空つぽの、忘れられた水族館の槽の中で。永遠に――おそらくは幾世紀の間を通じて――或る物すごい缺乏と不滿をもつた、人の目に見えない動物が生きて居た。
【受講料】
彗星読書倶楽部の会員さま:
無料
非会員さま:
¥13,200(税込)
お支払い方法:
決済方法は、クレジットカード決済・銀行振込の2種類からお選びいただけます。
申込フォームにてご希望の決済方法をお選びください。
【参加方法】
彗星読書倶楽部の会員さま:
下記の申込フォームで「現在会員として参加している」を選び、ユーザー名を入力して送信してください。
非会員さま:
下記の申込フォームを記入のうえ、送信してください。
送信後48時間以内に料金のお振込用メールをお送りいたします。
お振込が確認出来次第、メールにてZoomリンクをお送りしますので、当日の開催時間になったらご入室ください。
今回の講座は、カメラオンでもオフでも参加可能です。
本講座は、各回、作品の感想を語り合う時間を設けているため、マイクはオンにできるようご準備ください。
各回開始までに、課題作品をお読みください。
【講師】
1993年生まれ。小説家。
早稲田大学文化構想学部卒業後、さまざまな媒体に小説・詩・批評・エッセイを発表する傍ら、2018年にウェブサイト『彗星読書倶楽部』を開設、オンライン・オフライン問わず読書会を開催。
2021年、YouTubeチャンネル『彗星読書倶楽部』を開設、国内外の文学作品を原典や最新研究に準拠しながらも創造的に読解する解説動画を配信している。
2022年、読書好きが集まるコミュニティ『彗星読書倶楽部クラブメンバーシップ』を開始。
2023年6月、作品集『深い瞳を鋭くして』を刊行。
同年8月、日本には少ないクリエイティブライティングの講座『小説の教室』を開講。
同年11月、新サービス『彗星ブッククラブ』を開始。話題の新刊の著者インタビュー映像や解説動画を独占配信している。
2024年12月、作品集『大禍時 幻の巻』を刊行。
2025年11月、作品集『大禍時 影の巻』を刊行。
【Q&A】
・どんな人が対象ですか?
近代日本の代表的な詩人のひとり、萩原朔太郎の作品世界に興味がある人、
そして自分がまだ知らない日本語の表現方法を知りたいと考えている人のための講座です。
国語の教科書に掲載される詩も扱うので、ベーシックな教養を身に付けたい方にも最適です。
・会員になった方が受講料は安くなりますか?
はい。彗星読書倶楽部の会員になると、講座の受講料は実質半額の¥6,600になります。
こちらのページよりご入会いただけます。
ご入会後に本講座の申込フォームをお送りください。
その他の豊富な会員特典については「彗星読書倶楽部とは」ページをご覧ください。
・途中からでも参加可能ですか?
はい。第1回開催以後も、参加受付は続きます。
・欠席した回の内容は教えてもらえますか?
各回の終了後、当日の講義の録画映像視聴リンクと、資料PDFをメールでお送りいたします。
・リアルタイム参加はできませんが、参加できますか?
はい。各回終了後にお送りする録画と資料PDFで、当日の模様をお楽しみいただけます。
【過去の文学講座】
【その他・お問い合わせ】
録画視聴用リンクと資料PDFは受講生本人のみにお渡しするものです。
他人への譲渡を固く禁止します。
お問い合わせは
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(合同会社彗星通商 販売部 加藤)
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