漫画界において「魔神」とも称されるほど独自の作風を貫く漫画家・丸尾末広。
エロ・グロ・ナンセンス趣味を巧みに取り入れ、誰も真似できない作品群を世に送り出し続けています。
その代表作が、1983〜84年に雑誌掲載され、84年の単行本刊行以来ロングセラーであり続けている『少女椿』です。
天涯孤独の身となり貧しい見世物小屋の一員になった12歳の少女みどりは、団員たちからの過酷ないじめに耐え続けています。
そんな時に現れた奇術師・ワンダー正光が入団したことから、彼女の運命は大きく動き出してゆくのでした。
モラルに逆行する世界だけれど、覗いてみたい。他人にはお勧めできないけれど、何度も読みたい。
今回は、漫画『少女椿』で描かれる見世物の世界へ飛び込んでみましょう。
動画の目次
1:作品解説
2:見世物の歴史
3:寺山修司と見世物
第1章では、『少女椿』のあらすじとともに、初出情報、丸尾末広の作風の特徴を解説します。
丸尾が描き出す少年少女の妖艶さの源流である画家・高畠華宵や、コラージュの手法に注目すると、彼が漫画の歴史の流れに容易に位置付けられない理由が見えてきます。
また、なぜか本篇には登場しない、北一輝・美空ひばり・まだらの少女の3人がなぜ登場人物一覧ページに描かれているのか? 森 大那の考えを紹介しています。
第2章では、本書の原作である紙芝居についての情報を確認した後で、『少女椿』の重要な種本である古河三樹『見世物の歴史』を参照し、見世物の起源と最盛期である江戸時代、そして明治以後の動向を見ていきます。
本書のあとがきに書かれた著者の青年期の記憶は、読者にとりわけ大きな感銘を与えるでしょう。
第3章では、寺山修司の傑作エッセイ『花嫁化鳥』第4章で語られる見世物小屋と、彼の考察を読み解きます。
1973年に発表されたこの文章では、浅草の見世物小屋を見物し、たこ焼き屋やもつ鍋屋をハシゴする寺山が、見世物の口上に頻出する「親の因果が子にむくい」なる言い回しに注目し、親の罪によって子供が罰されるという思想の源流を見極めようとします。
その視点からは、『少女椿』の中にある「家族観」の要素が新たな姿をもって見えてくることでしょう。
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